コミュニティソーシャルワーカー

コミュニティソーシャルワーカー

公明新聞:2013年4月3日(水)付
見守り活動で高齢者宅を訪問するコミュニティソーシャルワーカーの勝部さんと民生委員の小西さん=3月27日 大阪・豊中市見守り活動で高齢者宅を訪問するコミュニティソーシャルワーカーの勝部さん(左)と民生委員の小西さん=3月27日 大阪・豊中市

既存制度で支援できない人を助ける
大阪府豊中市の取り組みから

生活上のさまざまな問題で困っていても、既存の福祉の枠組みでは支援を受けられない“制度のはざま”で苦しむ人たちがいる。そうした方々に親身に寄り添い、ボランティアらと一緒に問題解決に取り組むのが、「コミュニティソーシャルワーカー(CSW)」だ。いわば地域福祉の相談・調整役。生活困窮者への支援が社会全体で大きな課題となる中、積極的な活動で注目されている大阪府豊中市の取り組みを紹介する。

“ごみ屋敷”など複雑な問題を着実に解決

「調子はどないですか? 困ったことあったら電話してくださいね。家に来させてもらうから安心して」。お昼時、お弁当を携えて、一人暮らしの女性高齢者の元を訪ねたCSWの勝部麗子さん(市社会福祉協議会事務局次長兼地域福祉課長)。原田校区福祉委員会の戸谷文代副会長や民生委員の小西定子さんとともに、高齢者の見守りに回っていた。

「校区福祉委員会」とは、おおむね小学校区単位に結成された住民のボランティア組織のこと。一人暮らしのお年寄りを見守る他にも、お食事会やミニデイサービスなどを地域拠点で行っている。福祉委員らは、支援が必要な人を見つけるとCSWに連絡する。戸谷副会長は「『こんな人いてんねんけど、どないしよう』となったら、勝部さんに相談。即、動いてくれます」と奮闘ぶりを語る。またCSWは、市社協などが小学校区ごとに設置した「福祉なんでも相談窓口」を通じて、行政関係者や地域住民から相談を受けている。

どう対応していいか分からない問題ほど、CSWの存在は頼りになる。その代表的な事例が、市内で増えた“ごみ屋敷”問題だ。この問題には居住者の高齢化や精神的な障がい、社会的孤立など複数の要因が絡む。居住者本人が支援を拒否する場合も少なくない。CSWは行政関係者や福祉委員らと何度も家庭訪問して入居者の心を開き、問題の一つ一つを整理しながら、家の片付けだけでなく地域社会への参加を促す。

“ごみ屋敷”の問題以外にも、「若年性認知症の親の徘徊」「リストラによる生活の破綻と孤立」「親亡き後の精神障がい者世帯の生活」「発達障がいを抱えながらの就労」「東日本大震災で豊中市に転入してきた被災者の生きがいづくり」など、相談内容は多岐にわたる。2011年度に同窓口やCSWに寄せられた相談件数は1200件を超えた。

勝部さんは「精神的な障がいなどのために、支援の必要性を当事者自身が認識できていない場合がよく見受けられます。リストラなど当事者が声を上げにくい問題も深刻です。そうした“表に出にくいSOS”をキャッチするには、当事者と顔なじみの人がいる地域の協力が不可欠なのです」と強調する。

個別の事例から地域全体で支える仕組みつくる

CSWの奮闘ぶりを描いたマンガや資料などを収めた豊中市社協作成の本。このほど2冊目が発刊されたCSWの役割は、個別の相談に対応するだけではない。携わった事例を通じて市全体の課題を把握し、地域で支え合う解決の仕組みを考案する。いわば、CSWは地域福祉のセーフティーネット(安全網)づくりの担い手でもあるのだ。

例えば、“ごみ屋敷”問題では、「福祉ゴミ処理プロジェクト」として、関係機関で一定のルールを決定。本人が支援を求める場合と拒否する場合を想定した上で、ごみ分別、運搬、焼却について役割分担と対応の流れを決めた。これによって多くの相談が寄せられるようになり、市では05年度~11年度の間で184件に対応してきた。

また、若年性認知症の人が孫を連れて行方不明になる事態が起きたことをきっかけに、携帯電話のメール機能を利用した「徘徊SOSメールプロジェクト」を立ち上げた。家族や介護者から連絡を受けた市社協などが、捜してほしい人の情報を地域のメール受信登録者に一斉送信。発見した人が警察署などに連絡する仕組みだ。

さらに、悩んでいる人々が励まし合う「交流の場」づくりも活発で、「男性の介護者」「若い世代の介護者」「発達障がいの子どもなどを持つ家族」「高次脳機能障がいの患者を抱える家族」などを立ち上げて支援している。この他、CSWは介護保険生活圏域(7地域)ごとに、分野を超えた専門職などによる「地域福祉ネットワーク会議」を主催し、関係機関全体での情報の共有を図っている。

【コミュニティソーシャルワーカー】

大阪府の地域福祉支援計画に基づき、おおむね中学校区に1人の割合で配置されている。豊中市の場合は市社会福祉協議会に事業が委託され、現在14人が活動する。

公明、生活困窮者対策で活用提唱

CSWについては、公明党の山本かなえ参院議員(参院選予定候補=比例区)が12年7月、参院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会で豊中市の取り組みを紹介し、全国展開へ向けた制度化を求めた。

今年3月1日に党厚生労働部会が政府に提出した生活困窮者支援に関する要望書でも、「CSW等の配置により、生活困窮者に対する包括的な相談支援事業を創設すること」と訴えている。