被災者の税負担軽減へ 「雑損控除」による支援が充実 東日本大震災の特例を恒久化
政府が昨年12月に閣議決定した2023年度税制改正大綱では、雑損控除の繰越期間の延長による支援充実が盛り込まれ、実現へ。これは東日本大震災でのみ認められた特例を恒久化するもので、公明党が粘り強く実現を訴えてきました。ぜひ公明新聞記事をご覧ください。
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被災者の税負担軽減へ
「雑損控除」による支援が充実
東日本大震災の特例を恒久化 2023/03/10 3面 公明新聞 3面
■繰越期間、3年→5年に
「被害が大きい人の場合、雑損控除の3年の繰越期間では損失をカバーできない。それが5年に延長されれば大きな前進だ」――。熊本地震(16年)の直後、税理士として被災者への税務支援に奔走した経験を持つ男性は、制度の見直しを歓迎する。
実際、熊本地震の際には、繰越可能な3年間を過ぎてなお、控除し切れない損失額が残ったケースが7000件以上あったと推計されている。一方、東日本大震災では特例で繰越期間が5年に延長されたことで、多くの人の救済につながった。
こうした背景を踏まえ、23年度税制改正では、雑損控除の恩恵がより長く及ぶよう、「特定非常災害」で生じた損失について、繰越可能な期間を現行の3年から5年に延長する。特定非常災害は法律で「著しく異常かつ激甚な非常災害」と規定され、過去には熊本地震や西日本豪雨(18年)などが指定されている。
繰越控除が可能な期間が2年延長されることで、税負担は、どう変わるか。例えば、年間の所得約500万円の人が総額約3000万円の損失を受けた場合で概算すると、改正前では被災5年目から所得税が発生するが、改正後では同6年目まで所得税をゼロに抑えられる【図参照】。
災害時の税制上の支援策には、雑損控除の他に、災害減免法による所得税の減免があり、どちらかを選択できる。同減免は、年間所得1000万円以下などを条件に被災した年の所得税の全額または一部を免除できるが、損失が大きい時は雑損控除を選択した方が有利になることが多い。
■公明、現場の声代弁し実現/与党税制協議で粘り強く説得
公明党はこれまで、東日本大震災の被災地で税務支援に尽力してきた東北税理士会などと連携しながら、雑損控除の繰越期間の延長を求める現場の声を代弁。与党税制協議では、20年度改正の議論から4年連続で独自に主張し続けてきた。
当初、財務省は慎重姿勢を崩さず、「自民党側の関心はいまひとつ」(19年11月22日付東京新聞)だった。公明党は過去の災害の記録や当事者の声など、具体的な裏付けを示して粘り強く説得。特定非常災害を対象に、繰越期間の5年への延長を勝ち取った。
公明党の西田実仁税制調査会長は、自然災害が激甚化、頻発化する傾向にある中で、今回の措置が決まった意義を強調。「税負担が少しでも長く軽減されることは、生活再建に直結する話だ。今後も、税制面から被災者を支える制度設計に取り組む」と話した。
公明党は東日本大震災の直後、雑損控除の運用改善にも尽力。当時、被災者に支給される支援金が損害金額から差し引かれ、控除できる額が減ってしまう運用がなされていた。公明党が国税庁に見直しを強く要請し、支援金を損失から差し引かない運用へ改善された。
■12年分の思い結実、尽力に感謝/東北税理士会 髙澤圭一会長
東日本大震災から今年で12年。被災者に寄り添う災害関連税制の実現を求め続けてきた私たちにとって、今回の改正で雑損控除の繰越期間の延長が達成できることは大変に喜ばしい。12年分の思いが結実することになる。
公明党の尽力に心から感謝している。私たちの声を聴き、親身に相談に乗ってくれた。さまざまな機会を通じて粘り強く協議を重ねてくれたからこそ、政府を動かすことができた。
12年前、私が支援に赴いた石巻市の税務署では連日、不安や戸惑い、悲しみを抱えた多くの人が相談に来られていた。お一人お一人と話す中で私は、税の還付が復興への心のよりどころになっていることを痛感した。